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ケース『上司への業務改善提言』を批判的吟味する

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Peingというネット上の質問箱サービスをご存知でしょうか。

最近、私の質問箱に頂いた質問への回答をツイッターでシェアして、フォロワーの方々の反応を見たりしながら楽しんでいます。

今回は、思いのほかバズった質問への回答があったので、ブログにも書き残しておこうと思います。

結構厳しいことを書いたつもりでしたので、
『またあいつマウント取ってるよ!』
みたいにネガティブな炎上を覚悟していたのですが、

などなど、意外にも好意的なコメントを多くいただきました。

思考の整理方法、クリティカルシンキングの実践例のひとつとして参考になるかも?!と思ったので、ブログにも残しておこうと思います。

参考記事:クリティカルシンキング研修の効果

 

質問者さんからの質問は以下です

この質問に対する私の回答は以下です。

心労お察し致します。

まず、前提の確認が必要かなと思います。
『サービス残業が当たり前』
なのと
『(サービス残業ではないが)残業当たり前』
なのかで随分意味が異なります。

時間外手当の支払いがなされている前提で、定時に終わらない事そのものは、36協定違反等でない限り労基上問題にはなりません。
(個人が満足するかどうかは別物です。嫌なら辞める自由が確保されています。)

 

また、『残業当たり前な職場』の意味は、例えば一日22〜24単位取得が求められていて誰がやっても大幅な超過勤務となるようなケースと、1日18単位程度で先輩達は普通に定時に終わっているのに一部の職員のみが残業当たり前になっているようなケースとでは随分異なります。

 

さらには、『疲弊してしまう』というのも解釈が難しいと感じます。
私の経験をお伝えしますと、1日21単位やっていた我々の時代から、毎年増員し1日18単位まで一人当たりの仕事量を軽減しましたが、それでも過去の21単位の経験をしたことがない職員は『業務量が多過ぎる』と訴えていました。
このことからの学びは、本人の主観である『忙しい』『疲弊してしまう』という訴えに必要以上に振り回されることは得策ではないということでした。

 

結論としては、『前提情報不足なので何とも言えない』です。
自らの主観は『本当にそうか⁈』と自問した上で、前提情報をセットでまた質問して下さいませ。

 

その数日後、以下のように追加質問が来ました。

この質問に対する私の回答は以下です。

すいません、最初にお断りしておきますが貴方様のために今回はかなり厳しい回答となっています。
気を悪くされたらすいません。

『狭い範囲で物事を捉え、勝手な正義感が走っていくこと』

大変危険な事だと思います。
失礼ですがそのように感じました。

そのような状況で院長にまで話をしに行くことは、やめておいた方が良いです。
厳しいことを言うようですが、おそらく相手にされませんしリスクが伴います

貴方が貴方の判断で代替案を上司に訴えることそのものは、なんら問題ありません。
ただし、これらの限られた情報から考えると、もっと多角的に捉えないと相手にされないだろうなと思います。

 

例えば、

『デメリット↔︎メリット』
『主観↔︎客観』
『事実↔︎解釈』
『売上↔︎職員満足度』
『抽象↔︎具体』
『高プライオリティ↔︎低プライオリティ』

などの軸で、思考をいったり来たりして考えてみて下さい。

院長や上司と貴方様とでは、おそらく話が噛み合いません。
その理由は、思考している範囲の広さが異なり、貴方の考えきれていない範囲のことを上司や院長は考えて判断していると思うからです(あくまでも一般論です)

 

では、どうしたら良いか?(参考程度に読んでください)

物事を批判的に吟味する能力クリティカルシンキングのスキルを磨くと、これらの意味が分かっていただけるかもしれません。

あるいは、研究発表や論文をみて、一連の科学的手法を用いてどうやって自分の主張を支えるデータ(fact)を活用して説得力や客観性を増す努力をされているのか?という観点で論文を読んでみると、少し気づきがあるかもしれません。

例えば、

・今回のご自身の主張を支えるfactは何か?
・何と比較しての意見(考察・解釈)なのか?
・その主張に論理の飛躍が無いか?
・主張の限界は何か?

等でしょうか。

 

時間外手当が支払われているのであれば、1時間経っても皆が仕事をしていることは労基法上は何の問題もありません(←fact)

また、1日24単位かつ週108単位以内は厚労省が公に認めている範囲です(←fact)

何が普通で何が良い職場か?(←解釈)には言及しません。

 

それから、私が最初に勤務した職場は新人の頃から一人1日あたり30〜40名毎日みておりました(←fact)

だからといって時代も違いますし条件もそれぞれなので、一人1日10〜15名が『大して忙しくないのでは?(←解釈)とは申しません。

 

また、現在でも特に急性期病院では1日10〜15名という数は、数字だけを考えると私の知りうる情報からは至って標準的に近いようにも思います(←解釈)

 

解釈が人により分かれる言葉をビッグワードと言いますが、「普通」というビッグワードの判断軸は危険だと思います。

貴方
どのような職場で働きたいのか?

働く場所を選ぶ自由は貴方様に保障されています。

 

また、経営者も

経営者
どのような職場にしたいか?

を意思決定の連続でかたち創る自由が(制度やルールの範囲で)保障されています。

あとは、個々の意思決定なのです。

良い職場・悪い職場等は存在せず、あるのは『貴方様の価値観や判断軸に合う職場か?合わない職場か?』だけなんだと思います。

 

建設的な代替案は良いと思いますよ。

自分の人生、自分で意思決定してつくっていきたいですよね😊

 

この回答に対して、多くの反応をいただきました。

質問者さんからもその直後にDMを頂きました。

詳細は明かせませんが、質問者さんは非常に誠実で職場を良くしたいという熱意あふれる若手療法士の方でした。
他者からの意見を受け入れる謙虚さや柔軟性を備えた方だとお見受けしました。
そして、自身の意見をしっかりと持ち主張できる強さを併せ持つ、有望な若手だなと私は感じました。

 

上司のあり方について

優秀な方であればあるほど、若い頃は尖っている。

そんな部下を、上司が扱いきれるかどうか?が課題となります。

そんな話題も上がりました。

 

実はこの日は・・・

実は、この日は体調不良で体が動かず、それでいて寝過ぎで眠くはないという状態の時にこれら一連のツイートのやりとりがありました。

普段はなかなかゆっくりと丁寧な回答やコメントができませんが、ちょうどこの日はベッドの中でツイッターくらいしかやることがなかったことが功を奏して有意義な議論ができました。

SNSで全国の皆さんとこうして議論ができるなんて、良い時代ですね。
私自身、大変勉強になりました。

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理学療法士、MBA&保健学修士、医療介護マネジャー

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