今回も、質問箱に回答するかたちで記事を書きます。
今回は、『尖った意見を言える若者や部下を、上司が扱いきれるか問題』について。
前日の記事の流れで、私は以下のようなツイートをしました。
『尖った意見を言える若者や部下を、上司が扱いきれるか問題』
は、実はリハ業界に根深く存在する超重要課題だと思います。マネジャーこそ部下よりも思考のスキルが問われると思います。
(このケースについて、ではなく一般論です) https://t.co/rZ3FpfX4V5
— 松山太士@理学療法士 MHSc MBA マネジメント (@taishimatsuyama) 2019年1月12日
それに対して、今回は以下のようなご質問をいただきました。
私からの回答
『尖った意見を言える若者や部下を、上司が扱いきれるか問題』
実は、私も尖った若者でしたのでその気持がよーくわかります。
逆に、上司が昔尖っていなかったとしたら、もしかしたら貴方様の気持ちが分からないかもしれませんね。
私もたくさんの尖った若者を相手にしてきましたので、『うーん、よくあるよね〜』と思いながらも、おそらく上司からすると扱いにくくて困っているんだろうなという状況が正直想像できます。
さて、質問者さんの上司がどのような人なのかはさておき、質問者さん自身に対して私が気になったのは、以下の3点についてです。
◆自分の立場での主張だけでなく、相手の立場に思いを馳せて考えているか?
◆正論を言い過ぎていないか?
◆人の多様性を理解して実行力を高めているか?
◆自分の立場での主張だけでなく、相手の立場に思いを馳せて考えているか?
人は立場が違えば結論を出すために必要な情報や、判断軸・価値観などが異なります。特に、上司と部下という関係であれば、見ている視座も大いに異なる可能性が想定されます。
意見が異なるから悪いというわけではありません。異なるという前提で、どうやって相手との相違点を理解し一致点を見出すか?が大切です。
衝突することが目的なのではなく、相互理解を深め最適解を見出すことが目的なはずですからね。。。
まずは、相手のことを理解しようとする姿勢・心構えを持っているか?視野狭窄に陥っていないか?など自分自身を批判的に吟味し自問自答する思考を持っていることがマストです。クリティカルシンキングの実践とも言いかえることができるかと思います。
詳しくは、先日の記事を参照してください。
◆正論を言い過ぎていないか?
これ、私が若い頃特によくやってきた失敗です。今でもやっているかもしれません。。。確実にやっています。。。
自分の立場での主張だけでなく、相手の立場に思いを馳せて考えたという前提でも、正論を言い過ぎると人は動いてくれません。
人は自分が主人公の物語を生きている
って知ってましたか?私は、若い頃これをあまり意識していませんでした。
だから、たくさんの失敗をしました。
『他の職場ではこうだ!』
なーんてやろうとしていませんか?
(私もよくやってました・・・)
『お前のいうことは正論だ。そんな正論を言うお前のことが俺は嫌いだ!』
と私にアドバイスをくれた人がいました。
私の実父です。血は争えませんね・・・
ですから、絶対的な信頼関係のもとでなければ基本的には相手を論破してはいけません。
関係の質は何よりも先に必要です。論破という手段は、二度と合わない人には短期決戦が必要であれば使っても良いかもしれませんが、関係の質が低下することには留意しましょう。
では、どうしたらよいか?
相手の物語に思いを馳せて、相手が主人公として演じたくなるような物語を演出することです。
本人が納得・共感し自分自身で動くよう演出する、演出家のイメージです。
作業療法士が得意な領域ですね。
そのために、根拠となる事実情報(fact)を集めて活用することは大切です。
医学書・医学専門書、看護・薬学などの教科書・専門書の専門買取サイト「メディカルマイスター」
◆人の多様性を理解して実行力を高めているか?
質問者さんと上司の方とでは元来資質として持っているタイプが異なる可能性があります。
その話に入る前に、人の多様性について理解するおすすめの方法を少し説明します。
ストレングスファインダーという「自分の資質から強みを知る』自己分析方法があります。
上記の書籍巻末にはアクセスコードが付録されています。
ストレングスファインダーのwebページにこのアクセスコードを入力することで、自分が元来持っている資質のうち上位5つを分析して教えてくれます。
※注意:中古の書籍はすでにアクセスコードが使用されている可能性が高いので、新品を購入したほうが良いです。
更には、その資質の特徴や活かし方を詳細なpdf資料で解説してくれるというものです。
私は、この資料を見た時に「なんでこんなに俺のことが分かるんだ!?」と衝撃を受けました。
※web上で更に課金(約4,000円)すれば、34すべての資質を上から順に並べた結果を提示してくれます。ちなみに私は課金しました。
ストレングスファインダーの活用方法として、大きく2つあります。
・自分のことをより深く理解することができる
・(自分とは異なる)他者のことをより深く理解することができる
ストレングスファインダーについての詳細な説明はここでは省略しますが、34に分類された資質の強弱と組み合わせで人の多様性を分析するツールです。
詳細は、以下のサイトを参考にしてみてください。
さて、本題です。
質問者さんと私は似ているところがある気がしますが、共通する資質として指令性という資質を持っているのかもしれません。
指令性とは、『対立に怯えることなく解決に向け突き進む』資質です。
ちなみに私は、指令性が第4位の資質としてランクインしています。(笑)
それどころか、ひとたび考えが固まると、あなたはそれをほかの人に伝えずにはいられません。そしてひとたび目標が定まると、あなたはほかの人をそれに同調させるまで安心できません。
あなたは対立に怯えることはありません。むしろ、対立は解決策をみつけるための第一歩であることを知っています。
ほかの人は不愉快な状況に立ち向かうことを避けようとするかもしれません。ところが、「事実」や「真実」がどれだけ不愉快なことであろうとも、それを示さなければならないと感じます。
あなたは、課題が人々の間で明確に理解されていることを求めます。従って、あなたは人に、偏った考えを持たず正直であることを要求します。あなたは彼らにリスクに挑戦することを迫ります。彼らを怖がらせることすらあるかもしれません。これを嫌って、あなたのことを頑固と呼ぶ人もいるかもしれませんが、一方で、進んであなたに主導権を握らせることもしばしばあります。
人々は、立場をはっきりと示し、周りの人にもある特定の方向に向けて行動するように求める人に魅力を感じます。だから、人々はあなたに惹きつけられるでしょう。あなたには強い存在感があります。あなたは「指令性」を備えた人です。
結果を読んだ時、こんな感じでした。。。
自分で自分のことを知るって面白いんですよね。でも、なかなか自分一人ではできないんです。だからこそ、ストレングスファインダーは高く評価され、決して安くはない書籍が全世界でベストセラーになっていたり、某大手企業で社内教育の一環として採用されていたりするんだろうなと思います。
ちなみに、私の部署ではみんな自主的に結構やっていて、結果を共有し相互理解に努めるツールとして一部で活用しています。
一方、私が最下位(34位)の資質に、調和性というものがあります。
一言で言うと、『対立から得るものはないので最小限にしようとする』資質で、協調性とは少し意味が異なります。
「調和性」の強い人は、衝突している人同士にも共通するものを見出します。対立を避け、和解へと導こうとします。事実、調和は彼らの行動を左右する価値観の一つです。彼らは個人、家族、組織が共に協力する手助けをしたいと考えています。他の人が議論をしていても、論争を避ける方向に持っていき、全員が賛同できる、実用的で地に足の着いた事柄について話す方を好みます。
この2つの資質は対局にあるような関係性ですが、どちらが良くてどちらが悪いというものではありません。資質ですから基本的には変わることはありません。
これくらい人が元来大切にしている価値観や考え方は異なるということを理解しておくことが重要です。
そして、こうした多様性を理解し、組織全体で成果を出すために役割分担をすることができれば理想的です。
役割分担とは、例として家庭内の役割分担についてイメージしてみてください。
家庭内には社会の仕組みや規律を子供に教える父親役と、無償の愛で子供を包み心理的安全性を担保する母親役の2つの役割が重要です。
(かなり一般化・単純化しています)
しかし、父親役と母親役の一人二役はなかなか難しいですよね。
組織におけるマネジメントも同様です。
ここはバシッと「こうするべきだ!」と言わないといけない時もありますが、言った後に関係性の修復や場の空気を和らげることを両立させないといけない場面もあります。
しかし、この状況で一人二役を担うのは上司といえどしんどかったりします。調和性優位の上司であればなおさらです。
そんな時、『指令性』が優位である(と思われる)質問者さんが、『調和性』優位の○○技師長(仮)に対して
『ここは僕が○○技師長の意図を皆にしっかりと言っておきますから、○○技師長はその後のフォローをお願いします。』
というかたちで相手の得意な資質にフォーカスし動きたくなるような物語を演出して対応すれば、組織全体の成果を高めることつながります。これが役割分担です。
そして、『○○は状況をよく理解できる信頼の置ける部下だ』と質問者さんとの関係の質も高まることでしょう。
このようにして信頼を重ね信頼残高を蓄えることができれば、上司にとって耳の痛いことを提言する際でも実行力が高まることにつながります。
実は最近知ったのですが、面白いことに私の右腕に当たる管理職の方は、何と調和性が第1位なんです!最下位の私と1位の右腕ですよ。オモロくないですか!?
違うから良いんですよ。同じだったら役割分担できませんから。私みたいな指令性優位なやつばかりの組織だったらみんな息苦しくて組織は崩壊しますよ。いやマジで。笑
実際私達は父親役の私と母親役の右腕管理職とで役割分担しフォローし合いながらずっとやってきました。
その他の管理職の特性もだいたい相互理解していますから、『1+1=2』以上の成果を組織で出すことができるわけです。組織で仕事をすることの意義の一つはここにあります。一人では大したことはできませんから。
そう考えると、自己理解に基づいた相互理解と役割分担ってめちゃくちゃ大切ですよね。
つまり、資質の違いから起こる意見の相違を
・真っ向勝負で理論武装し対立
ではなく、
・高い抽象度でベクトルを合わせて、同じ方向に向かうための役割分担
に持っていくことを意識すると良いわけです。
どうせ頑張って対立しても違うものは違うわけですから、そのほうが建設的です。
一人ではできない価値創造、組織だからこそできる価値の最大化を目指しましょう。
最後はやはり『上司の器次第』の部分も
質問者さん自身へのメッセージとしてあれこれ書いてきましたが、とはいえ最後は上司の器次第の部分も大いにあります。
そして、上司がやるべきこともまったく同じだと思います。
お互いが関係の質を高め、自己開示できる心理的安全性を確保しながら相互理解を深めることが何より大切です。
それさえできていれば、多少の問題は乗り越えられます。自分で言うのもなんですが、うちの組織の強いところはこれです。だから色々とあっても皆乗り越えられるんです。
そして、上司という立場にある人こそ、自ら歩み寄って行動を起こすことが大切かなと思います(自戒を込めて)。
質問者さんに対する最後のアドバイスとしては、もし上司が本当に事なかれ主義で自己保身ばかり考えているような人なのであれば、そこから離れるという選択もひとつです。
残念ながら、人はそんなに簡単には変わりませんからね。特に、一定以上の年齢を超えると難しい印象です。
自分の人生ですから、他者に振り回されたり合わせすぎたりする必要はありません。自分で決めて前に進めれば良いのです。
他人は変えられないが自分を変えることはできます。
コントロール出来ないことにフォーカスしても消耗するだけですから、変えようとするのであれば自分自身にフォーカスを当て、それでも合わなければ離れましょう。
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